素材マラソンと行商人
この世の中において、お金という存在はとても重要である。
現実問題としてお金が無いとさっぱり生きていくことができない。
だから世の中の人々は働いてお金を稼ぐのである。
すっかり確立された、世の中の仕組みというやつだ。
そんなシステムはドラクエ10でも存在している。
新しい装備は欲しいけれど、その金額の高いこと高いこと。
悲しいかな、普通に冒険しているだけでは到底買い揃えることができない。
というわけで、当面の課題としてお金稼ぎをしなきゃなあという話になってくる。
従来のドラクエの場合、適当な村や街の周囲をグルグル回って、
レベル上げとお金稼ぎを同時にこなしながらひたすら
モンスターとの戦闘を続けたものだけど、ドラクエ10のお金稼ぎはそれだけではない。
やはり一番手軽かつ確実なのは、素材マラソンと呼ばれる活動である。
ドラクエ10のフィールドには、至るところにピカピカと光るポイントがある。
そこには素材と呼ばれるアイテムがあり、これが結構な値段で売れるのだ。
拾える素材はその場所によって様々で、鉱山では鉱石が、
森林ではキノコや木材が手に入る。
それらを持てるだけ拾い集めてひたすら売り抜く行為が素材マラソンである。
その日、僕は素材マラソンに明け暮れていた。
欲しい装備を手に入れるには、ザックリとした計算であと
200個程キノコを拾わなければならない。
当然、素材マラソンをしていればキノコ以外の素材も手に入るから、
キノコ200個集めようという話じゃないけれど、それなりに大変な作業だ。
僕は気長に行こうと決め、歌でも歌いながらのんびりとキノコ狩りを続ける。
その時、「取れ立てキノコ、いらんかねー?」と突然声を掛けられた。
辺りを見回すと、一人の男のエルフがピョンピョンとジャンプしながらこちらを見ていた。
「街より安いよー、キノコいらんかねー」
どうやら行商人のようである。
思わず(僕も昔はセルビナの入り口前で山串を売り歩いたなあ)と、
他のゲームを思い出してしまった。
ドラクエ10で行商人を見かけるのは初めてだった。
僕は興味本位でそのエルフに話しかける。
「おいくらですか?」
「いらっしゃいー、まいどー!」
彼の口調は、行商人そのものだ。
聞いてもいないのにキノコ以外の商品の値段まで流暢に教えてくれる。
入力速度から察するに、定型文に本日のお薦めを登録してるんだろう。
見事な商売魂だ。
それにしても、彼が口にする素材の値段の安いこと安いこと。
おそらく街の相場の約半額である。
「どうしてこんなに安いんですか?」
僕は思わず問いかけると彼はニヤリと笑いながら
「へい、うちは現地で収穫して現地で販売するから、他のお店より安いんです」
と答えた。
もちろんドラクエ10に配送コストなんて存在しない。
あったとしてもルーラでひとっ飛びなんだから、コストなんてかかるもんではない。
でもそれを突っ込むのも野暮な話というものだ。
「へー、それは大将の努力の成果ですなあ」
「いやいやいや、大将なんてとんでもない。あっしはまだ修行中の身ですわ」
「そうなんですかー。どれくらい修行されてるんで?」
「この森にこもって、2週間になりますわ」
エルフの返答に思わず目が点になった。
「2週間!? 街に帰ってないの?」
「へい、エルフですから」
う~ん、お見事!
僕はこの出会いに感動し、キノコを10個ほど買い求めた。
「まいどありい!」
彼は威勢よくキノコを袋に入れ、持たせてくれた(ように見えた)。
良い買い物をした。
ところでそのエルフとの別れ際、彼がポツリとこぼした
「俺、商人に転職したいんですわ」
という言葉がなんとなく忘れられない。
そういえば、過去のドラクエに商人という職業があったなぁと思いだした。
もし商人が実装されたら、彼はいち早く転職するのだろう。
そうしたら、もっと値引きしてくれるかな?
もしかしたら「商売あがったりですわー」なんて言うのかもしれない。
僕はそんな未来に少しだけニヤニヤしながら、鞄いっぱいにキノコを詰める。
それからグッと空に手を伸ばし、ルーラーストーンを掲げた。
さあ、このキノコをさっさと売ってしまおう。
いくら稼げたかなあ。
ああ、今日は良い素材マラソンだった。
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