迷宮に響いた、珍妙な「おたけび」


Labyrinth of Failure by Chris Hackett and Eleanor Lovinsky / TheGirlsNY

 

2012年12月の大型バージョンアップから「魔法の迷宮」というコンテンツが追加された。
簡単に説明すると、他のプレイヤーと一緒に全5階で構成されるダンジョンを探索するというものである。

「魔法の迷宮」は普通に遊べば10~20分程度でクリアできるボリュームなので、非常に遊びやすい。今日は時間も遅いから迷宮1回やって寝ようかな、という具合に良い感じでプレイ時間の目安が作れるので僕はとても気に入っている。

厳しいことを言えば、もう少し迷宮の変化にバリエーションが欲しいかな。
まあきっとこれから進化していくんだろう。
今は何よりも、他のプレイヤーと一緒に迷宮を進んでいくこと自体が楽しい。

そう、基本的に「魔法の迷宮」はサポートキャラ(CPUが操作する仲間)ではなく、他のプレイヤーと自動でパーティがマッチングされることに特徴がある。

僕はオンラインゲームを遊ぶのは初めてではないから、パーティプレイの楽しさはある程度知っているつもりだ。
特に数年前に遊んでいた「ファイナルファンタジー11(以下、FF11)」というオンラインゲームは、他のプレイヤーとパーティを組まないとモンスターとまともに戦えないバランスだったので積極的にパーティを組んだものだ。(現在はバランスも改良されたようだが)

他のプレイヤーと遊ぶパーティプレイは、1人で遊ぶ時と違って様々な状況が激しく変化しとても刺激的だ。

ちょっと専門用語が混じって申し訳ないのだけど、
「FF11」でパーティを組んだ際に「連携技はコン・レタ・コンでお願いします」と
パーティリーダーさんにお願いされて、
(おいおい、僕が締めのコンかよ・・・緊張するなぁ・・・)
という感じで、コントローラーを握る手が震えたりもした。

詳しく説明すると長くなるから簡単に説明すると、「FF11」には連携技というパーティ戦ならではの醍醐味があって、複数のプレイヤーで特定の特技をテンポ良く順番に繰り出すとダメージにボーナスが付くというものだ。

例えば「ドラクエ10」に例えると、3人のプレイヤーで敵モンスターにテンポ良く「せいけん突き」⇒「かえん斬り」⇒「せいけん突き」なんてやると、連携成立となりダメージにボーナスが付くという感じだ。

そんでもって昔の僕は、
(おいおい、僕が締めのせいけん突きかよ・・・緊張するなぁ・・・)
なんて震えていたわけである。昔っから本番に弱い性格なのである。
パワプロに例えるなら「チャンス×」でベテランのベンチウォーマーみたいなものだ。

話を無理やり戻します。
つまり、パーティプレイは刺激的だけどとっても楽しいよって話です。

ところがパーティプレイにもやっぱりデメリットがあって、メンバーを探す手間だったり、自分の好きなタイミングに抜け辛いというような不便さも確かに存在する。

「ドラクエ10」はこの問題を解消するためにサポートキャラという、他のプレイヤーキャラをCPUとして仲間にするシステムが採用されており、1人プレイでも疑似的なパーティプレイが楽しめるようになっているのだ。

このサポートキャラが便利なものでして、
なにしろパッとパーティを組んで眠くなったらパッと解散できるもんだから非常に重宝している。
CPUもそれなりに賢いので、よっぽど強いモンスターに挑まない限りは戦力的にも申し分ない。

というわけで僕は最近、もっぱらこのサポートキャラと共に冒険をしていた。
久しく他のプレイヤーとワイワイ騒ぎながら遊ぶことから遠ざかっていた。
これは僕が特別というわけじゃなく、そういう遊び方をするプレイヤーも多かったはずだ。


Friends: Cheerish This Moment. / iMorpheus

 

今回のバージョンアップで追加された「魔法の迷宮」はそんなソロプレイ愛好家に一石を投じた。
「魔法の迷宮」に行くと、自動的にレベルが近い見知らぬプレイヤーと強制的にパーティが組まれるのである。

相手は物言わぬCPUキャラじゃない。
出会った瞬間に「宜しくお願いします」と礼儀正しく頭を下げてくる。
僕もあたふたしながら、「宜しくお願いしますー」なんて頭を下げる。

「魔法の迷宮」はパーティプレイから遠ざかっていた僕に、改めて他のプレイヤーと遊ぶ楽しさを再確認させてくれた。
だから僕は今、1日1回迷宮に潜るだけで十分楽しんでいる。

先日、こんなことがあった。
些細なお話なんだけど、凄くオンラインゲームっぽい出来事だったから記録に残しておきたい。


Liebesaepfel_2.17112009282 / madle-fotowelt.de

 

その日も僕は迷宮へ向かった。
すぐに自動マッチングが行われ、僕を含めて4人のパーティが組まれる。

「宜しく」
「よろしく」
「宜しくお願いします」
「宜しくお願いしますー」

各々、簡単に挨拶を交わした。
それから2~3回、ピョンピョンとジャンプをして最深部へと向かっていく。

僕たちはシステムによって偶然出会い、そして手を組んだパーティである。
同じゲームを遊んでいるとはいえ、見知らぬ他人と言っても過言ではない。

近所で評判のラーメン屋に1人で出かけたら店のおばちゃんに、「ごめんねー! 今混んでるから相席でもいいー?」なんて言われて4人掛けのテーブルに案内されるようなもんだ。

で、そのテーブルには世代もバラバラな―――そうだなぁ、例えばスーツを着た中年男性と、首回りが伸びているセーターのお爺さんと、メガネで小太りの男子学生が座ってて、そんなテーブルに自分も座り、「味玉醤油ラーメンでー」なんて注文をした後は相席特有の少し気まずい雰囲気の中、携帯をポチポチ弄るようなもんである。

僕たちパーティは迷宮を進む。
時折ピョンピョンとジャンプをしながらも、組んだばかりのパーティは固い雰囲気で雑談も無い。
もちろん、決して仲が悪いわけでもないし互いが憎いわけでもない。
ただ、4人の歯車が噛み合うキッカケが無いだけだ。

黙々と立ちふさがるモンスターを倒してパーティは進んでいく。
やがて鋭い牙が光る、大きな獣のモンスターと出くわした。
僕たちは憶することなく、それまでと同様に無言で戦闘を開始する。

戦闘が中盤に差し掛かる頃、モンスターの動きが変わった。
画面にはモンスターが風属性最高位に位置する「バギクロス」を唱えたと表示される。

一瞬パーティに緊張が走った。
大ダメージは免れない――僕がそう、諦めた時だった。


photo.jpg / betsyweber

 

メンバーの一人が素早くモンスターの前に移動し、「おたけび」という特技を使った。
この特技は一定の確率でモンスターの行動を強制的に止める、使いどころの難しい技だ。
彼の「おたけび」は見事、会心の一撃となりモンスターのバギクロスを喰いとめた。

「おお!」
「かっこいい!」

僕ともう一人のメンバーが思わずキーボードに指を走らせた。

「うひ」

「おたけび」を使ったプレイヤーが得意気に一本指で鼻の下をこする。
その時、4人の歯車はガッシリと噛み合い始めたんだと思う。

戦闘終了後、チャット欄が急に賑やかになった。

「今のおたけび、ナイス!」
「うん、ナイスだったー」
「おたけびって、どんな声だしてるのかな」
「やっぱり、うおおおお! とか?」
「にょっぽーん! へにょへにょ~~!」
「なにそれww」
「迫力ないねw」
「ぷにょろ~~~~~ん!!」
「ぴろぽろぷ~~~~~~ん!」
「うつってる!?w」
「あははw」
「よし、あの夕陽に向かって叫ぼう!」
「夕日!? ここ迷宮だしw!」
「じゃあボスに向かって叫ぼう!」
「にょっぽーん!」
「嫌な集団だw」
「ボスが逃げちゃうよww」
「あははw」

歯車が4つ、ガッシリ噛み合ってクルクル回る。
それぞれが好き勝手、妙な雄叫びを上げながら迷宮を走り回った。

「むにょ~~~~ん!!」

僕は笑いながらキーボードを叩いた。
数分前まで、あんなに無言だったのに。相手は見知らぬプレイヤーなのに。
なんだよ、むにょ~~~~んって。ホント意味不明。
でもそんな遠慮や疑問を全て「おたけび」がかき消していく。
僕は笑う。ただただ笑ってキーボードを叩く。

あっという間に迷宮のボスを撃破した。お別れの時間だ。
僕たちはそれぞれ「お疲れ様!」と手を振り、それぞれの冒険に戻っていった。


Goodbye / where are the joneses

 

画面が暗く暗転し、通い慣れたオルフェアの宿屋前に到着。
ああ、あの4人を巡り合わせた迷宮に感謝を。
バギクロスを唱えたモンスターに感謝を。
そして、見事にモンスターを捉えた「おたけび」に感謝を。

もしまだパーティプレイをしたことがない人がいたら、是非「魔法の迷宮」を試してもらいたい。

ソロの方が気楽なのは間違いないんだけど、ソロには無い楽しみは必ず存在する。
もちろん、パーティプレイの中で嫌な思いをすることや失敗してメンバーに迷惑を掛けることもあるかもしれない。
僕も色々失敗している。散々やらかしている。

それでもパーティプレイは楽しいと思う。想像できない魅力がわんさか眠ってる。
「魔法の迷宮」やこの文章で、パーティプレイが少しでも楽しそうと思う人が増えるなら僕は凄く嬉しい。

さて、というわけで今日も迷宮に行ってきます!

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