炎の指輪より燃えていた、新宿伊勢丹の婚約指輪。
ルドマンから示された二つの指輪探し。そのうちのひとつ、炎の指輪はサラボナからさほど離れていない火山にあるらしい。
僕は意を決して火山の中に入ると、真っ赤な溶岩がそこらじゅうに流れており、多くの白骨化した遺体が転がっていた。それだけでもこの環境がどれほど過酷なものか、容易に想像がつく。そして僕はドラクエでの冒険じゃなくて、実生活での指輪探しを思い出していた。
あれは確か2012年12月25日。クリスマス真っ只中のことだった。
新宿にある老舗の百貨店、伊勢丹。その一階、装飾品売り場はクリスマス商戦に沸き、正に戦場と化していた。この炎の指輪が眠る火山が生ぬるいと思えるほど、クリスマスの新宿伊勢丹は過酷な場所だった。
人、人、人。誰もが数万、数十万、数百万の装飾品を眺めている。そしてそれらが文字通り飛ぶように売れてゆく。今日1日でどれほどのお金が動くのか。不景気はどこにいったんだと、不思議な怒りを覚えた。
そんな場所に侵入して早々、僕はそのあまりの迫力に圧倒されてしまった。なんといったって僕はキモオタなのだ。新宿に行くと立ち寄るのはゲーセンとヨドバシカメラしかないのだ。そんなキモオタがリア充が集まる百貨店の装飾品売り場に突撃しようとしている。場違いも甚だしい。
怖い。ただただ、怖い。レヌール城の冒険など、クリスマスの新宿伊勢丹に比べれば子供騙しだと思う。それでも僕は決めていた。その日はクリスマスに婚約指輪を買うと決めていたのだ。そして隣には彼女もいる。一時期話題になった電車男や、時たま男気を見せる大好きなやる夫のように、キモオタにもキモオタなりに、逃げてはならない場面が存在するのだ!・・・たぶん。
僕は文字通り身の縮む思いをして結婚指輪を買い求めた。給料3ヶ月分どころか、なんとか半月分くらいの金額。さらにヨドバシのクレジットカードで最大回数分割して買った婚約指輪。部屋に戻り、改めて彼女の指にはめてあげる。
僕は装飾品なんて興味無いし、まったく欲しいとも思わないけれど、彼女の長い指に光る婚約指輪はキラキラしてて、こんな輝いているもの見たことないと思うくらい、印象的だった。
ちょっとだけ、指輪も良いものだなと思えた。あんなに光るなんて想像もしなかったよ。
話をドラクエ5に戻す。主人公達は少しだけ火山のボスに苦戦したけれど、無事に炎の指輪を手に入れることができた。この指輪はどれほど光るのだろう。僕が買った指輪の方が光ると良いな。
少しだけそんな考えが頭をよぎり、僕は慌てて首を振る。あはは、ほんと、キモオタ。
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