モンスターの取り合いはネトゲの華よ。


 

オンラインゲームには往々にして、他のプレイヤーとモンスターを取り合うことがある。そのモンスターはクエスト達成のために必要だったり、高値で売れる貴重なアイテムを落としたり、非常に魅力的な経験値を与えてくれたりする。プレイヤーはそんな魅力的なモンスターを必死になって取り合うのだ。

そんな取り合いについては賛否両論あるが、僕はどちらかと問われると取り合いは好きだったりする。実際の社会では譲り合い精神が美徳とされる中、モンスターの取り合いは堂々と「これは俺のもんだ!」と宣言することができる。純粋な早い者勝ちというルールは非常にシンプルで、それはそれで楽しいなと思うのだ。

ドラクエ10にもそんな取り合いはしばしば行われる。やっぱり一番盛り上がるのは大型バージョンアップ後に開かれる、レベル上限解放クエストに関するモンスターの取り合いだろうか。レベルの上限値を更にあげるため多くの冒険者が対象のモンスターを求めて取り合いを始めるわけだ。それを見るたびいつも「対象に指定されたモンスターはさぞ迷惑だろうなぁ」なんて思ってもみるが、結局僕もその取り合いに参加してるので偉そうな事は何も言えない。

ここ最近ドラクエ10を遊べていなかったがつい先日、まとまった時間が取れたので僕はクエストを進めることにした。ver1.4の時に追加されたクエストで、前回の大型バージョンアップの際に実装されたものである。クエストが公開されてからかなり日が経っているので、僕は「まあ競争相手もいないだろうし、サクサクと進めることができるっしょー」なんて油断していた。

そのクエストはとある荒野にある教会に行き、夜にだけ出現するモンスターを討伐して稀にドロップするアイテムを取ってくるというものだった。出現条件が夜だけと少し面倒だが特に苦戦する相手でもない。さっさと倒してクリアしてしまおう。僕はそう考えていた。

そんなこんなでモンスターが登場する教会に到着。すると、そこにプクリポが1匹、3人のサポート仲間を連れて立っていた。彼の頭には長時間操作されていないことを示す、離籍中のマークが浮かんでいた。こんな辺境の地で立ち尽くすなんてモノ好きな人だ。まあ気にすることはないかと思い、僕は手近なモンスターでレベル上げをしながら時間を潰すことにする。ドラクエ10の世界はまだ昼。目的のモンスターが出現する夜まで、まだ時間がある。

やがて空は蒼く沈み、そして夜になった。僕は教会に戻った。すると先ほどのプクリポがまだいるではないか! それだけならまだしも、彼は何かを探すかのように教会周辺をグルグルと回っているのだ。「・・・ライバルだ!」僕は察した。こんな場所に、しかも夜の時間に探すものといえば一つしかない。僕も探しているモンスターだ。これは取り合いだ! 取り合い祭りだ!

僕はピョン!とジャンプして「俺もそのモンスター、狙ってるぜー?」という意志を示した。彼も無言でピョンとジャンプした。よしきた、準備は整った。僕と彼と、取り合いガチンコ勝負の始まりだ。

ドラクエ10 モンスター取り合い

すると彼はドルボードと呼ばれる、移動速度が速くなる乗り物に乗り出した。ドラクエ10の場合、モンスターを取るにはそのモンスターと接触するしか方法はない。つまりモンスターが出現した際、自分のキャラクターの位置と移動速度が勝敗を分けることになる。モンスターの出現位置がわからないのであれば移動速度が速い方が断然有利だ。彼は本気なのだ。僕も負けるものかとドルボードを取り出しハンドルを握る。なんだかレース漫画のような展開になってきた。負けるものかと気合いを入れる。

夜が深夜となる頃、ついに目的のモンスターが出現した。出現位置は彼の方が若干近い。しかしちょうど彼の死角となっているのか、彼はモンスターに向かおうとしない。チャンス! 僕はドルボードを思いっきり前に傾けてモンスターに突撃する。このまま・・・! このまま・・・! その時、ライバルがモンスターの存在に気付いた。彼はドルボードを見事に操って180度ターンを決め、一直線に向かっていく。この勝負、どっちだ・・・!?

残念ながら僕はタッチの差で負けてしまった。彼が戦闘に入る。僕は勝者を称えるために彼を”おうえん”した。すると、「ありがとでやんすー」と先ほどの真剣勝負はどこへやら、気の抜けた返事があって僕は思わず笑ってしまった。

「w」

僕は思わずキーボードに指を滑らせる。すると、

「w」

画面の中で彼も笑っていた。

その後僕たちは何回か「w」とジャンプを繰り返し、やがて夜が明けた。幸いにも僕は何度かモンスターを倒して目的のアイテムを手に入れることができた。ふと時計を見る。楽しい時間はあっという間。もう寝る時間だ。

僕は彼に”おじぎ”の仕草を送りルーラストーンを掲げた。飛ぶ間際、薄れゆく画面の中で彼が両手をパタパタと振っている姿が見えて、それがちょっぴり嬉しかった。

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洋菓子

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本職はゲームライター。お仕事とは別に、個人の趣味でゲームの話題に触れていくブログ「その日草子」を運営中。大作RPGから格ゲー、ギャルゲーまでジャンルを問わないアラサー♂。けどホラーだけは苦手。お気に召した記事やお役に立てた記事があればシェア頂けると喜びます(・ω・)
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