【思い出ピコピコ】FF11_アイドルを名乗ったハゲガルカ
先日、新生ファイナルファンタジー14の動画を見た。思わず昔遊んでいたFF11を思い出してしまい、今となっては遠く離れてしまったヴァナディールで過ごした過去の冒険を懐かしく思う。あの頃のチームメンバーはみんな元気だろうか。すっかり連絡を取る手段が無くなってしまったから知る由も無いけれど元気だったらいいな。もしかしたらお互いに気付かないままドラクエ10ですれ違ってたりして。
FF11にはたくさんの思い出がある。その中でも一際強烈で数年経った今でも鮮明に覚えている、とあるプレイヤーとの出来事を残しておきたい。
FF11には5種類の種族があって、そのうちの一つにガルカと呼ばれる種族があった。大柄で筋肉隆々で、「種族としては性別はないが人間としては男性」しか存在しない、とってもゴツい種族である。そのガルカの中でも、とある特定の髪型をしたガルカは通称”ハゲガルカ”と呼ばれ、物凄いインパクトを世界中にふりまいていた。
今回登場する彼もまた、”ハゲガルカ”を愛用するプレイヤーだった。寒々とした風景が広がる鉱山都市バストゥーク。その商業区の一画に彼はいつも立っていた。FF11にはキャラクターをログインさせたまま、街中の至るところで放置してアイテムの売買を行う”寝バザー”という文化があり、彼は”寝バザー”専用のサブキャラのようだった。
まるで置物のように、いつも決まった定位置にピクリともせず立ち尽くす”ハゲガルカ”。その頭上には「HirosueRyoko」という名前が表示されていた。※実際はほかの女性芸能人の名前だったのですがプレイヤー名を晒すことになるため、別の芸能人名に置き換えます。
その容姿と「HirosueRyoko」という名前のギャップから、僕はすぐに彼の存在を覚えた。僕はオンラインゲームにてこういう遊び方をするプレイヤーが大好きだ。そのうち僕は彼の前を通り過ぎるたびに「/bow」という感情を表現するコマンドを用いて、彼にお辞儀をするようになった。もちろん、お辞儀をするときは立ち止まってコマンドを入力するのがマナーである。「HirosueRyoko」は”寝バザー”状態なのだから、僕がお辞儀をしているかなんて見てないだろうけど、かつて鉱山で栄えた街にいつも変わらず立っている彼が、なんだかこの街の守り神の様に思えて仕方なく、お辞儀せずにはいられなかったのだ。
そんな生活が半年以上続いただろうか。僕はいつもの場所で「HirosueRyoko」の名前を探し、見つけてはお辞儀を繰り返していた。その日も僕は彼を見つけて、「/bow」とお辞儀をした。
【Castella(当時の僕の名前だ)はHirosueRyokoに丁寧にお辞儀をした】
そんなシステムメッセージが流れる。見慣れたメッセージだ。僕はいつもの儀式を済ませると先を急いだ。―――その矢先だった。
【HirosueRyokoは丁寧にCastellaに頭突きをした】
見慣れない文言がチャットウインドウに表示された。思わず僕の足が止まる。え? 頭突き?HirosueRyokoが頭突き? 僕はビクビクしながら画面を移すカメラを動かす。すると背後から、あのHirosueRyokoがノッシノッシと追いかけてくるではないか!
「・・・うおっ!?」
思わず声が出た。動いた・・・! HirosueRyokoが動いた! 中に人がいた!!
「いつもお辞儀してくるチビ発見w」
HirosueRyokoは僕の前に立って、そう口にした。その時僕が操作するプレイヤーはタルタルというとても小さな種族。HirosueRyokoの身長は僕の3倍は軽くあるだろうか。その圧倒的威圧感に僕は言葉を失った。
「あっ・・・あっ・・・動いてる・・・!?」 僕は震える指でキーボードに打ち込んだ。
「いつもお辞儀してくれてありがとう」
HirosueRyokoは今度は丁寧に頭を下げる。
「いえ、こちらこそ毎回毎回、お辞儀しちゃってすみません」
「いえいえ、いいんです。そうだ、あなたにこれを差し上げよう」
そう言って彼は突然、自身が身に着けていたブロンズサブリガと呼ばれる、金属と革で作られたブーメランパンツを脱ぎ始めた。HirosueRyokoからトレードが申し込まれる。僕は何も言えないまま、脱ぎたてホヤホヤのパンツを受け取った。
「では、私はこれで」
HirosueRyokoはもう一度丁寧にお辞儀をし、踵を返した。ノッシノッシと同じように走っていき、いつもの定位置にいつもの方角を向いてまた何事も無かったように立ち尽くす。ああ、しまった。あまりの展開にまだお礼を言っていない。
「あ、あの・・・パンツありがとうございました!」
僕は慌ててお礼の言葉を述べた。すると【HirosueRyokoはにやりとしている……。】というシステムメッセージが流れ、彼は静かに守り神へと戻っていった。
その後、僕は段々とFF11から遠ざかり、やがて完全に引退した。先日FF11に久しぶりに追加ディスクが発売され、遊んでいた当時の記憶が色々蘇った。バランス面で正直辛かったこともあったけど、オンラインならではの感動も多く大好きなゲームだ。
流石に今からFF11を新たに始めることは難しい。随分と遊びやすくなったと聞くけれど、それでも大変なことだろう。だから僕はヴァナディールに戻ることはない。いや、ヴァナディールだけじゃない。きっといつかは、今遊んでいるドラクエ10のアストルティアを離れるだろう。
そんな日のために楽しい思い出は一つでも多く作っていけたら嬉しい。オンラインゲームはいつかサービスが終わってしまう時がくる。それがレトロゲームとは決定的に違う点だと僕は思う。月日と共に変化して、いつか完全に遊べなくなってしまうのがオンラインゲームだ。
いつか遊べなくなってしまうその日のために。今だけのゲームを楽しむために。だから、僕は今日もゲームで遊ぶんだ。
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