【思い出ピコピコ】ときめきメモリアル
ときめきメモリアル。以下、ときメモ。
今となってはメジャーとなった、恋愛シミュレーションゲームの
先駆けとなったソフトである。
正直遊ぶ迄は、「ゲームで恋愛? 無い無い(笑)」とか思ってました。
当時、中学校1年生だった僕は「ときメモ? 引くわー」なんて言ってました。
しかし、何故かときメモの波は周囲の友人を徐々に飲みこんでいったのである。
遂にはクラスのリア充グループの一人がときメモを始め、グループ内に布教。
その影響もあり書道の時間、同じくリア充グループの女子が
見事な筆さばきで『ときメモ』と書きあげる所にまで至ってしまった。
先生「んー、「ときメモ」とはなんだ?」
リア充男子「青春っす!」
その瞬間、クラスは爆笑に包まれた。
ときメモは多感な男女40人が集うクラスを一つにまとめ上げたのだ。
とまあ、そんな雰囲気にもなってくると
「どれ、ここは一つ噂のときメモでも買ってみるか」となるわけである。
「ゲームファンとして話題のゲームをプレイしないのは嫌だ!
仕方なく! 仕方なく買うんだからね(//Д///)」なんて自分を正当化したりするわけだ。
あの頃の僕は紛れもなく純朴であった。
そんなわけで純朴少年は日曜日の朝、近所のゲームショップに繰り出した。
時間は開店直後の朝10時。
(この時間なら知人に会うこともあるまい)
そんなことを考慮しての行動である。
そう! 今でこそ「あずにゃんペロペロ」とか平気で言うようになったが
当時の僕はときメモを買うという行為が非常に恥ずかしかったのだ!
男の子には誰もが勇気を出してえっちな本やえっちなDVDを
ゲットするという試練があるのだけれど、生憎当時の僕はまだその試練は越えていなかった。
その時の僕の総資産は川原で拾った「エヴァンゲリオン失楽園」のみである。
えっちな本を買う勇気どころか、ときメモを買う勇気すら無かった。
「へー、これがときメモねー。ふーん」と、
さも偶然見つけて手にとってみましたよ?的な動きで
店内をウロウロ、モタモタすること小一時間程経った頃だ。
「あれー、洋菓子じゃん」
未だに踏ん切りが付かずウロウロしていた僕を、クラスのリア充が
偶然見つけて声を掛けてきた。意味ねー。早起きの意味ねー。
「や、やあ。奇遇だね」
僕はなんだか見られちゃ不味い瞬間を目撃された気がして慌てて平静を装った。
「なにしてんの?」
「い、いやー、なにか面白いゲームないかなーってさ」
するとリア充はニヤリと笑いながら、
「ときメモやれよ! あれ面白いぜ!?」
なんて言ってきたのだ。
僕は予想外の展開にドキリとしながらも、これはチャンスだと思った。
(これならその場のノリで、ネタ的な空気でときメモが買えるかもしれない!)
純朴な少年が狡猾なキモオタとして目覚めた瞬間である。
とはいえ、いきなり「ときメモ? 買う買うー♪」
なんて答えるわけにもいかない。世の中、タイミングが大事なのだ。
「えー? ときメモー? 面白いのあれー?」
僕はあえて、興味薄げなリアクションを返した。
するとリア充は身を乗り出して、
「いや、俺もぶっちゃけよくわからんけど、面白いらしいぜ」
なんて力説する。なんだよ、オマエは遊んだことないのかよ。
「なー、洋菓子。おまえちょっと買ってみろよー」
「えー、ウソー、マジかー」
「いーから買ってみろよー」
そんなこんなで僕は、外向きとしては
「あくまでもネタとして!」というノリでときメモを買うことに成功したのだ。
この時のリア充とは今ではすっかり疎遠になってしまったけど、
ときメモを買う勇気をくれたことには感謝している。
さて、ときメモは意外とシビアなゲームだ。
初プレイの際はいまいちコツが掴めず不本意な結末を迎えたけれど、
セオリーが分かってくると大抵の女の子は狙い通りに攻略することができた。
しかし、メインのヒロインである藤崎詩織だけは難しかった。
彼女は頭脳明晰、スポーツ万能、おまけに誰からも好かれるという、
文字通りパーフェクトな女の子だった。
パーフェクトな女の子に告白されるには、パーフェクトな男になる必要がある。
そのためには綿密なプレイ計画を立てなければならない。
僕はその週末をときメモ一色で過ごした。
ゲームだとわかっているんだけれども、
画面の向こうの彼女が笑うと嬉しいし、告白されるシーンではむず痒い思いをした。
まあ、そのせいでときメモの舞台となった高校生活に
過度な期待を抱いてしまったのだけれど、それはまた別のお話。
そんなこんなで週明け、僕はいつもの通り学校に登校した。
すると週末にゲームショップで会ったリア充が声を掛けてくる。
「やあ、ときメモ! ときメモは進んだか!?」
―――気付いたら、僕のアダ名がときメモになっていた・・・。
ときメモはそのゲーム内容はもちろん面白かったのだけれど、
それ以上に(買うのに苦労したなあ)という思い出がある。
でもきっと、こうしてみんな大人になっていくんじゃないかなー。
・・・なんてね。
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